不便さすら愛おしい。旧型ランドローバー110系ディーゼルと過ごした「本物のクロカン」体験

【名車再生】35年の愛車遍歴と輸入車ライフ

近年のSUVブームによって、街中では快適性やデザイン性を重視した四輪駆動車を見かける機会が増えました。

現在、私自身はドイツ車でSUVディーゼルモデルに乗っています。静かで快適、燃費も良く、長距離移動でも疲れにくい。現代のクルマとして本当に完成度が高いと感じています。

しかし、そんな便利なクルマに乗っているからこそ、時折どうしても思い出してしまう存在があります。

それが、1990年代に所有していた黒の「ランドローバー110系ディーゼル」です。

現在では“クラシックディフェンダー”として高い人気を誇るモデルですが、実際に所有してみると、現代のSUVとは思想そのものが大きく異なるクルマでした。

快適性や扱いやすさとは無縁。
その代わりに、「本格クロカン」だけが持つ独特の魅力と圧倒的な安心感がありました。

今回は、当時の記憶を振り返りながら、旧型ランドローバー110系ディーゼルと過ごした日々についてお話ししたいと思います。

日本の街中では、決して扱いやすいクルマではなかった

1990年代当時の愛車、黒のランドローバー・ディフェンダー110(リアビュー)の実車写真
駐車場に佇む黒のディフェンダー110。色褪せた1枚のフィルム写真が、不便で愛おしかった当時の濃密な記憶を呼び起こす。

1990年代当時の愛車、黒のランドローバー110系ディーゼル。
無骨な四角いボディは、今見ても独特の存在感があります。

まず率直に言えば、このクルマは日本の街中で気軽に乗るタイプの車ではありませんでした。

ロングホイールベースの大きな車体に加え、ラダーフレーム構造特有の取り回し感覚もあり、細い道や狭い駐車場ではかなり気を遣います。

スーパーの駐車場では、なるべく端のスペースを探して駐車するのが半ば習慣になっていました。
当時はバックモニターや駐車支援機能など当然ありませんから、重いクラッチを踏みながら、ミラーだけを頼りに慎重に車庫入れしていたのを覚えています。

背面タイヤを背負った四角い車体を、日本の限られた駐車スペースへ収めるのは、毎回ちょっとした緊張感がありました。

快適性より「機械感」。それが旧ランドローバーだった

当時のフィルム写真を撮影したもの。1990年モデル ランドローバー・ディフェンダー 110のリアカーゴエリア内部。折りたたまれたリアシートと、その下の消火器が見える。
奇跡的に見つかったフィルム写真より。1990年モデル ディフェンダー110の無骨な荷室。菱形模様の金属板と、その奥に設置された消火器が、道具としての機能美を感じさせます。

当時のフィルム写真に残っていた荷室。
鉄板が見える無骨な空間には、道具としての機能美がありました。

現代のSUVのような静粛性や快適装備を期待すると、かなり驚くと思います。

冬場は個体によって隙間風が入り込むこともあり、暖房も現代車のようにすぐには効きません。
さらに、防音材も最低限だったため、ディーゼルエンジン特有の機械音や振動が常に車内へ伝わってきます。

正直に言えば、快適なクルマではありませんでした。

しかし、その不便さが次第に「味」へ変わっていくのです。

重いクラッチ。
長いストロークのシフト。
エンジンの鼓動がそのまま伝わる振動。

今のクルマのように“静かで何も考えずに乗れる”存在ではなく、常にドライバーが機械と対話しながら走らせる必要がありました。

だからこそ、「運転している」という感覚が非常に濃かったのだと思います。

雪道で感じた、本格クロカンならではの安心感

旧ランドローバー110系ディーゼルが本領を発揮したのは、やはり雪道や悪路でした。

特に印象に残っているのが、真冬のスキー場への道中です。

周囲の乗用車が深い雪でスタックし、タイヤを空転させている中でも、このクルマは低速でしっかりと路面を掴みながら前へ進んでいきました。

スタッドレスタイヤを装着し、マニュアルミッションを丁寧に操作しながら走らせると、重たい車体が雪面を確実に捉えて前進していく。

あの時の「安心感」は、今でも強烈に記憶に残っています。

実際、スキー場やキャンプ場でスタックしてしまった車を、牽引ロープを使って救出したこともありました。
※牽引作業は安全を確認した上で行っています。

普段は不便さばかり感じるクルマなのに、環境が厳しくなるほど頼もしく感じる。

それが、このランドローバー110系ディーゼルの大きな魅力でした。

現代車にはない「操る感覚」という贅沢

現在乗っているディーゼル車は、本当に完成度が高いと感じます。

静かで快適。
低回転から十分なトルクがあり、高速道路でも疲れにくい。

現代の技術進化には素直に感心します。

しかし、その快適さに慣れるほど、旧ランドローバーで感じていた「操る楽しさ」を思い出す瞬間があります。

重いクラッチを踏み、ディーゼルの振動を感じながら、自分の操作で巨大な機械を動かしていく感覚。

便利ではありません。
むしろ、かなり不便です。

それでも、あのクルマには現代車にはない「生き物のような個性」がありました。

まとめ|旧ランドローバー110系は、不便さまで含めて愛せるクルマだった

街乗りでは取り回しに苦労し、駐車場では神経を使い、冬は隙間風にも悩まされる。

それでも、雪道や悪路へ入った瞬間、このクルマは圧倒的な安心感を与えてくれる存在へ変わります。

現代SUVのような快適性はありません。
しかし、本格クロカンならではの無骨さや機械感は、今でも強烈な記憶として残っています。

もし、これから旧型ディフェンダーやランドローバー110系の購入を検討している方がいるなら、「便利さ」を求めるより、「不便さまで楽しめるか」が重要になるでしょう。

その価値観に共感できるのであれば、このクルマはきっと人生に深く刻まれる一台になるはずです。

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