
昨今のSUVブームにより、街中ではスタイリッシュで快適な四駆を見かけることが多くなりました。現在私はVW T-Rocという快適な最新ディーゼルSUVに乗っていますが、ふと「車を操るあの濃厚な時間」を懐かしく思い出すことがあります。
私にとっての「本物のクロカン」の原点。それは、1990年代に新車で手にした相棒、黒の「ランドローバー・ディフェンダー110(ディーゼル)」です。
今回は、現代の快適な車では絶対に味わえない、ディフェンダーの強烈すぎる「不便さ」と、それを補って余りある雪道や悪路での「無双っぷり」について、当時の記憶と色褪せたフィルム写真と共にお話しします。
街乗りは苦行?旧型ディフェンダー110の巨大なサイズと「駐車場」のリアルな苦労

いきなりですが、ディフェンダー110での街乗りや日常使いは、率直に言って「苦労の連続」でした。
まず、圧倒的なサイズと小回りの利かなさ。細い道は極力避けて通るのが基本でしたし、スーパーなどの駐車場では絶対に「一番端のスペース」を選ばなければなりませんでした。端が空いていない時は、空くまでひたすら待つという徹底ぶりです。
背面タイヤを背負ったこの巨体を日本の狭い駐車場に収めるのは、毎回ちょっとしたイベントのようなものでした。
快適性ゼロの乗り心地?隙間風が吹き込むスパルタンな内装とディーゼル音

さらに、車内環境も現代の車とはかけ離れていました。
上の写真をご覧いただければお分かりの通り、荷室には軍用車の名残である横向きのジャンプシート(折りたたみ椅子)が備えられ、鉄板がむき出しのスパルタンな空間です。
冬場は車内に容赦なく入り込む「隙間風」が冷たく、ディーゼル特有の野太いエンジン音は、街乗りでも高速道路でも常に車内に響き渡っていました。「快適性」や「静粛性」という言葉とは無縁の、まさに無骨な機械だったのです。
雪道での圧倒的な走破性!真冬のスキー場でスタック車を次々救出した最強の四駆

しかし、そんな日常の不便さへの不満は、一歩オフロードや雪道に足を踏み入れた瞬間に、強烈な「快感」と「信頼」へと変わります。
ディフェンダーが最も輝いたのは真冬のスキー場でした。周囲の車が深い雪で次々とスタックし、身動きが取れなくなって苦労している中、カンガルーバーを備えた私の黒いディフェンダーは全くものともせずに雪道を突き進んでいきます。
冬用タイヤを履かせ、マニュアルトランスミッションを2速に入れて発進(セカンド発進)すれば、どんなに深い雪でも確実に路面を捉え、グイグイと車体を前へ押し出してくれるのです。あの時の「無敵感」と痛快さは、今でも忘れられません。
実際、スキー場への道中や、泥濘(ぬかるみ)の激しいキャンプ場などで、立ち往生している他の車を何台も引っ張って助けました。悪路になればなるほど、この車は最強の相棒へと姿を変えるのです。
この無骨なディフェンダーから乗り換えた次なる愛車、ディスカバリー3。今度は『最新の電子制御』で絶壁を下るという、全く別の次元のオフロード体験をすることになります。その衝撃の様子はこちらからどうぞ。

現代のSUVでは味わえない!オフロードでマニュアル車(MT)を操る究極の贅沢
週末に本格的なオフロードコースを走らせた時の楽しさも、筆舌に尽くしがたいものがありました。
深い轍(わだち)や急な斜面を、エンジン音を轟かせながら自分の手足でねじ伏せていく感覚。今の電子制御で快適に走れるSUVとは違い、ディフェンダーはドライバーの技量と判断がダイレクトに挙動に直結します。
隙間風に震え、駐車場で気を揉んだ日常の苦労も、この「機械と一体になって悪路を走破する喜び」の前では、すべてが愛おしい思い出に変わってしまいます。
まとめ:不便さを超える魅力。旧型ディフェンダー110は人生に刻まれる一生モノの名車
ディフェンダー110は、決して誰にでもおすすめできる車ではありませんでした。しかし、その「不便さ」を許容し、本物の走破性を求めた者に対しては、他のどんな車も提供できない「圧倒的な頼もしさ」と「濃密な体験」を与えてくれました。
現代の快適なSUV(今の愛車であるT-Rocも含め)は本当に素晴らしいですが、時折、あの黒いディフェンダーの重いステアリングと、雪道を突き進むディーゼルエンジンの鼓動がたまらなく恋しくなります。
私にとってディフェンダー110は、単なる移動手段を超えた、人生の記憶に深く刻まれる「最高の相棒」でした。


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