【試乗記】フィアット 600eは不便で割高なEV?愛車T-Rocから乗り換えを検討する筆者が語る「イタリア車のリアル」

VW T-Rocから乗り換えを検討する筆者によるフィアット600e試乗レビュー記事のアイキャッチ画像 【誤解を正す】輸入車オーナーの本音レポート
ドイツ車(T-Roc)の精緻さに慣れた筆者が、イタリアンEV「フィアット600e」のリアルな魅力を本音で斬る!

「輸入車のEVなんて、インフラ面でも不便だし、価格の割に狭くてコスパが悪い」
電気自動車、特にイタリア車の「フィアット 600e(セイチェント e)」に対して、ネット上ではそんな厳しい声もよく見かけます。

当時、私の愛車であるフォルクスワーゲン・T-Roc(TDI)は、ちょうど5年目の車検という大きな節目を迎えていました。これまで35年間にわたり、英国車やドイツ車といった「質実剛健で理屈っぽい車」を新車で乗り継いできた私ですが、60代を迎えてふと思ったんです。「次の5年は、イタリア車特有のあの『華やかさ』と暮らしてみるのも悪くないな」と。

そこで次期愛車の最有力候補として、実際にフィアットの正規ディーラーへ足を運び、600eのステアリングを握ってきました。
ドイツ車に乗り慣れたベテランオーナーの視点から、ネットで言われる「不便さ」は本当なのか、ガソリン車の基準では測れないこの車の「本当の価値」を、忖度なしで本音レビューします。

ショールームでの出会い:理屈抜きに「ずるい」イタリアンデザイン

ディーラーに到着し、まず私の目に飛び込んできたのは、ショールームの特等席に佇む本命のEV、「フィアット 600e」でした。

長年ドイツ車の鋭いプレスラインを見慣れてきた目には、この丸みを帯びた愛嬌たっぷりの造形は本当に新鮮です。ただそこに置かれているだけで、周りの空気がパッと明るくなる。

車を単なる移動の道具ではなく、生活を彩るインテリアのように作ってしまう。この「理屈抜きの自己表現力」は、やっぱりイタリア車はずるいな、と思わされます。スペック表には絶対に載らない、最大の武器ですね。

試乗で判明した「タイトな居住性」という妥協点

しかし、実際にその600eの運転席へ乗り込もうとした瞬間、「おっと」と声が出そうになりました。同クラスのSUVであるT-Rocと比べると、明らかにルーフ(天井)が近く、圧迫感があったからです。

VW T-Roc TDIとフィアット 600eのサイズ・居住性比較インフォグラフィック

600eの全高は1,595mm。数値上はT-Rocと大差ありません。原因は「EV特有の構造」にあります。床下に分厚い駆動用バッテリーを敷き詰めているため、フロア全体が底上げされていて、結果的に室内空間が上下に狭くなっているんです。

シートポジションを合わせても座面が少し高く、T-Rocのような「車体にスッポリ収まる安心感」はありません。後部座席に座ってみても、大人が足を組めるような余裕はなく、あくまで「タイトな空間」です。
家族4人で頻繁に長距離旅行に行くような「万能な居住性」を求めるなら、間違いなくT-Rocに軍配が上がります。ここは明確な妥協点ですね。

航続距離と走りの質感:「ラテンの気質」を許せるか

いざ走り出してみると、モーターならではのスッと前に出る加速はさすがの一言。全幅1,780mmという絶妙なサイズも手伝って、街中をスイスイ走る感覚は非常に気持ちがいいです。

EV(電気自動車)の充電プラグと充電スタンド
無給油で長距離を走れるディーゼル車と比べると、EV運用では計画的な充電の手間が必須になります。

ただ、運転していると「イタリア車らしい大らかさ(=ドイツ車ほどの緻密さがない)」を感じる部分も正直ありました。
ブレーキホールドのタイミングが少し曖昧だったり、バッテリーの重さのせいか、段差を越えた時の「ドスッ」という突き上げ感がT-Rocよりもダイレクトに伝わってきたり。モーターの挙動は正確無比ですが、車全体の動きにはどこか「人間臭いアナログ感」が残っています。

また、一番懸念される「航続距離」についても、満充電で実質350km〜400km程度。無給油で1,000km近く走れるT-Rocのディーゼルと比べたら、そりゃあ不便です。こまめな充電計画を立てる手間は確実に増えます。

でも、それを「欠陥」と呼ぶのはちょっと違う気がしました。「細かいことは気にせず、この美しいデザインと軽快な走りを楽しもうよ」と車が語りかけてくるような、特有のラテン気質。これを笑って受け入れられる「大人の余裕」があるかどうか。それが、この車のオーナーになれるかの踏み絵ですね。

総括:優等生じゃない。でも、だからこそ惹かれる

試乗を終えてはっきりと分かりました。フィアット 600eは、何でも1台でこなす「コスパ抜群の優等生」ではありません。

後部座席は狭いし、長距離は充電が気になります。客観的に見れば不便な要素は確かに存在します。
しかし、自宅に充電環境があり、普段は街乗りメインという自分のライフスタイルに当てはめれば、この車は毎日の通勤やちょっとした移動を「特別な時間」に変えてくれる魅力を持っています。

効率やコスパだけを考えるなら、T-Rocに乗り続けるのが大正解です。でも、これまでの35年間で色々な車を経験してきた今だからこそ、多少の不便さには目をつぶってでも、この「所有するワクワク感」を手に入れたいと強く思わされました。

【免責事項について】 本記事に掲載している試乗レビュー、居住性の感覚、航続距離等の印象は、筆者個人の実体験に基づくものです。 車両の乗り心地や室内の広さの感じ方には個人差があります。また、EVの航続距離は走行環境(気温、エアコンの使用状況など)により大きく変動します。購入をご検討の際は、必ずご自身で正規ディーラーにて試乗し、実車をご確認いただきますようお願いいたします。

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