「アバルトのMTって疲れませんか?」
試乗前、私たち夫婦もネットでそんな声を何度も目にしていました。
クラッチが重そう。
街乗りはギクシャクしそう。
長距離はしんどそう。
長年イギリス車やドイツ車を乗り継いできた私自身、正直に言えば「趣味性の強い小さなスポーツカー」という先入観を持っていたのも事実です。
ですが、実際に試乗してみると、その印象は良い意味で完全に裏切られました。
今回の記事では、35年輸入車を乗り継いできた私が、実際にアバルトのMTへ試乗して感じたリアルな印象を、できるだけ客観的にお伝えします。
EV試乗の翌日に出会った“真逆のクルマ”

アバルトに興味を持ったきっかけは、実は妻のひと言でした。
「やっぱり車って、自分で操る感覚がないと面白くないよね」
その前日、私たちは最新EVにも試乗していました。
静かで滑らか。
加速も速い。
完成度も非常に高い。
ですが、どこか“操作している感覚”が薄く、私たちには少し物足りなさが残ったのです。
そんなタイミングで妻が「アバルトのMTに乗ってみたい」と言い出し、翌日フィアット/アバルトのディーラーへ向かうことになりました。
結論:合理性だけでは測れない魅力がある

最初に結論を書いてしまいます。
もし、
- コストパフォーマンス重視
- 静粛性重視
- 快適性重視
- 絶対的な速さ重視
で考えるなら、現代の国産スポーツモデルは非常に優秀です。
一方、アバルトはそういった“合理性”だけで語る車ではありませんでした。
エンジンをかけた瞬間の高揚感。
街角を曲がるだけで楽しい感覚。
アクセルを踏み込んだ時の音や振動。
そういった「感情に訴えかける部分」に強烈な魅力がある車だったのです。
希少になりつつあるMTモデルとの出会い
ディーラーで印象的だったのは、営業担当者のこの言葉でした。
「MTの新車在庫はかなり少なくなっています」
日本向けのガソリン仕様595/695系は終売方向となっており、私たちが訪れた時点では在庫車中心の状況になっていました。
そのため、MTモデルを新車で選べる機会自体がかなり限られている印象です。
もちろん地域やタイミングによって在庫状況は異なると思いますが、独特の“今しかない感”があったのは事実でした。
「MTは疲れる」は本当なのか?
実際に試乗してまず驚いたのが、クラッチ操作の軽さでした。
もっと重く、神経を使う車を想像していたのですが、私にはかなり扱いやすく感じられました。
クラッチミートも極端にシビアではなく、久しぶりのMTでも自然に走り出せます。
少なくとも、
「街乗りが常に苦痛」
「渋滞が耐えられない」
という印象はありません。
もちろんAT車ほど楽ではありませんが、ネットで語られるほど“極端に乗りづらい車”という感じではありませんでした。
この車最大の魅力は“音と操作感”
走り出してから特に印象に残ったのは、やはり独特の排気音です。
アクセルを踏み込むたびに響く、あの小気味良いサウンド。
現代車の多くは静粛性が高く、“快適さ”を優先しています。
ですがアバルトは違いました。
エンジン音や振動を積極的にドライバーへ伝えてくる。
この感覚は、かつて乗っていた古いイギリス車にもどこか通じるものがあります。
「機械を操っている感覚」が非常に濃いのです。
ドイツ車とも国産車とも違う独特の味
長年ドイツ車にも乗ってきた私から見ると、アバルトは非常に独特な立ち位置の車でした。
アウトバーン育ちのドイツ車のような“高速域での重厚な安定感”とは少し違います。
一方で、私がこれまで試乗・所有してきた国産コンパクトスポーツと比較すると、足回りやボディ全体に独特の芯の強さを感じました。
特に印象的だったのは、
- 小さく軽快
- 反応が速い
- でも不安定ではない
という絶妙なバランスです。
コンパクトなのに、どこか欧州車らしい落ち着きがある。
この感覚は、実際に試乗しないとなかなか伝わりにくい部分かもしれません。
ディーラーの雰囲気にも“イタリアらしさ”があった
もうひとつ印象に残ったのが、ディーラー全体の空気感です。
これまで経験してきたドイツ車ディーラーは、良い意味で非常に合理的でした。
一方、フィアット/アバルトはもっと柔らかい。
どこか陽気で、人間味がある。
妻も「なんだか居心地がいいね」と話していました。
車そのものだけでなく、ブランド全体の空気感にもイタリア車らしい魅力を感じた瞬間でした。
まとめ:アバルトは“感性”で選ぶ車だった
アバルトは、万人向けの優等生ではありません。
乗り心地は硬めですし、静粛性も高くありません。
スペックや合理性だけを基準にすれば、もっと優秀な車はたくさんあると思います。
ですが、この車には数字では測れない魅力がありました。
エンジンをかけるたびに気分が上がる。
運転そのものが楽しい。
ただ移動するだけの時間が、少し特別になる。
そんな“感情を動かす力”を持った車だったのです。
そして、この試乗をきっかけに、私たち夫婦は完全に「イタリア車の世界」に引き込まれていくことになります。
その翌日、ショールームの奥で出会ったアルファロメオ・ジュリアの衝撃については、また別の記事で詳しく書きたいと思います。


