イギリス車やドイツ車を中心に乗り継いできた、私の35年にわたる輸入車ライフ。そんな私がついに足を踏み入れたのが、これまで全く縁のなかった「イタリア車」の世界でした。
事の発端は、長年連れ添った愛車との別れを検討していた3月15日。妻の「アバルトのマニュアル(MT)に乗ってみたい」という一言で、私たちはフィアット/アバルトのディーラーへと足を運びました。
車好きの憧れである「サソリのエンブレム」。しかし一方で、ネット上では「疲れる」「割高」「スイフトスポーツなどの国産スポーツの方が速くて優秀」といったネガティブな声(誤解)もよく目にします。
今回は、過激なルックスに隠されたアバルトの「本当の乗り味」と、ディーラーで体験した驚きの連続について、国産車やドイツ車と比較しながら現役オーナーのリアルな目線でレポートします!
まずは結論!スペックの国産車か、官能のアバルトか

いきなり結論からお伝えします。
「とにかく安くて、壊れなくて、サーキットのタイムが速い車」を求めているなら、迷わずスイフトスポーツやGRヤリスなどの国産車を選ぶのが正解です。日本の車作りは本当に優秀です。
しかし、もしあなたが「エンジンをかけた瞬間の高揚感」や「街中の交差点を曲がるだけでもニヤリとしてしまう楽しさ」にお金を払えるのであれば、アバルトは絶対に後悔しない、唯一無二の選択肢になります。
まさかの奇跡!生産終了した「ガソリンのアバルト」新車との出会い

久しぶりのMT車へのワクワク感と少しの緊張を胸にディーラーへ足を踏み入れると、私たちは思いがけない「奇跡」に遭遇することになります。
「実は、MTの新車在庫が2台だけあります」
担当の営業マンからそう言われた時は、まさに運命だと思いました。
というのも、アバルトの純粋なガソリンモデル(F595/695)は、実は2024年5月の段階で日本向けの生産を終了しています。つまり、現在となっては、新車でMTのアバルトに出会えるのは「ディーラーが奇跡的に確保していた在庫車」か「極めて低走行な認定中古車」に限られているのです。
「新車でアバルトのMTを選べるチャンスは、本当にこれが最後かもしれない」
そんな焦燥感と特別感も、私たちの心を強く動かす最高のスパイスになりました。
誤解①:「乗りにくい・疲れる」を吹き飛ばすエンジン音と軽いクラッチ
アバルトのMTに対して「クラッチが重そう」「街乗りではギクシャクして乗りにくそう」というイメージを持っている方は多いでしょう。私自身も「久しぶりのMTだし、エンストしたらどうしよう」と少し身構えていました。
しかし、実際に運転席に座り、恐る恐るクラッチを踏み込んでみると「えっ、こんなに軽いの!」と驚かされます。
ペダルの操作感は拍子抜けするほど軽く、繋がりのポイントも非常にマイルド。エンストに対する不安は、走り出しの数分で完全に消え去りました。神経質になる必要は全くなく、スムーズに街の交通の流れに乗ることができます。
そして何より心を掴まれるのが、背後から響く「エンジン音(排気音)」です。 アクセルを踏み込めば弾けるような快音を奏でるマフラー(レコードモンツァ)のサウンドは、遮音性が高められた現代の優等生な車たちとは一線を画します。この音を聴きながらMTを操るだけで、毎日の通勤路が特別なステージに変わってしまう。それがアバルト最大の「毒(魅力)」です。
誤解②:「走りは国産スポーツと同等」という勘違い
コンパクトカーの走りにおいて、よく国産ホットハッチと比較されますが、実際に走らせてみると「車作りの思想」が根本的に違うことに気づきます。
アバルトはホイールベースが短く、ステアリングを切った瞬間にノーズがスッと入り込む機敏さは、まさにライトウェイトスポーツの醍醐味です。 そして特筆すべきは、「ある程度のスピードでカーブに進入した際の安定感」です。
これまでの私の35年の経験から率直に比較すると、アウトバーンで鍛えられたドイツ車の「矢のような直進安定性と剛性感」には一歩譲ります。 しかし、日本車(国産コンパクト)と比較した場合は、間違いなくアバルトの方が足回りの踏ん張りと、ボディ全体でGを受け止める「安心感・安定感」が一段上にあります。
軽快に小回りが効くのに、カーブを曲がっても腰砕けにならない。この「ドイツ車と日本車のちょうど中間に位置するような絶妙な味付け」こそが、イタリア車が長年愛される理由なのだと深く納得しました。
イタリアンブランドならではの、陽気で温かいホスピタリティ
そして、この日の試乗をさらに素晴らしい思い出にしてくれたのが、ディーラーのホスピタリティです。
これまで質実剛健なドイツ車や伝統的なイギリス車を乗り継いできた私にとって、フィアット/アバルトの店舗が持つ雰囲気はとても新鮮でした。ブランドのイメージをそのまま体現したような、陽気で明るく、そして妻と訪れてもリラックスできる温かい接客。 「車をただ売る」というよりも「一緒にアバルトの情熱的な世界観を楽しむ」ような素晴らしい対応に、初めてのイタリア車ディーラーに対する不安はすっかり安心感へと変わりました。
まとめ:アバルトは「不便さ」すら愛せる大人のためのおもちゃ
アバルトのMTは、決して「万人受けする完璧な優等生」ではありません。 乗り心地は硬いですし、コスパやスペック表の数値だけで見れば、国産車に軍配が上がる部分も多々あります。
しかし、圧倒的なエンジン音、小気味良い走り出し、そして絶妙なコーナリングの安定感を一度味わってしまうと、そんな「小さな欠点」はどうでも良くなってしまうほどの強烈な魅力があります。ネット上の「疲れる」「割高」という声は、この魅力を知らずにスペックだけで車を選んでしまった人の誤解に過ぎません。
追記:そして私たちは、運命の「ジュリア」へと導かれる
かくいう私も、このアバルトへの試乗をきっかけに「イタリア車の持つ陽気でおおらかな魅力」にすっかり取り憑かれてしまった一人です。
自身の現在のライフスタイル(実用性)と照らし合わせ、最終的にこの尖ったスポーツカーを愛車として選ぶことはありませんでしたが、実はこの日、同じショールームの奥で、私たちはさらなる衝撃的な出会いを果たしていました。そう、あのアルファロメオ「ジュリア」です。
アバルトが火をつけたイタリア車の情熱が、翌日にどう展開していったのか。その劇的な一日のお話は、また別の記事でじっくりと語らせていただきます!



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