Jeep Avenger は、とても完成度の高いクルマでした。
コンパクトで扱いやすく、都会にも似合うデザイン。
さらに、日本導入モデルはBEV(バッテリーEV)仕様となっており、EVならではの静粛性やスムーズな加速性能も備えている。
実際、このモデルは欧州で高い評価を受け、European Car of the Year 2023を受賞しています。
私自身も購入候補としてかなり本気で検討しており、期待を抱きながらディーラーへ試乗に向かつた。
しかし結果として、私たち夫婦はこのクルマを選びませんでした。
今回は、35年以上にわたりイギリス車やドイツ車を乗り継いできた立場から、実際に試乗して感じた“カタログには載らない感覚”について、率直に書いてみたいと思います。
第一印象は「これは売れる」と思わせる完成度
実車を初めて見た瞬間、素直に感じたのは、
「これは日本でもかなり人気が出そうだ」
ということでした。
日本の道路環境にちょうどいいサイズ感
Jeep Avenger は、ジープらしい存在感を残しながらも、非常に扱いやすいサイズ感にまとめられています。
伝統的なセブンスロットグリルを現代的にアレンジしたフロントデザインも印象的で、無骨すぎず、都市部にも自然に溶け込む雰囲気があります。
特に良いと感じたのが、
- 狭い住宅街
- 立体駐車場
- 商業施設の駐車場
など、日本の日常環境で扱いやすそうだった点です。
「毎日乗るクルマとして、かなりバランスが良い」
試乗前の時点では、かなり購入に気持ちが傾いていました。
EV特有の静粛感と、正確すぎる加速フィール
しかし、実際に走り始めると、少しずつ気持ちに変化が出てきました。
なぜか写真を撮る気持ちになれなかった
今振り返っても少し不思議なのですが、この試乗の時、私はほとんど写真を撮っていませんでした。
普段なら、
- 外装
- インテリア
- メーター
- ホイール
などを自然に撮影しているはずです。
ですがこの日は、なぜかそういう気持ちが湧かなかった。
決して魅力がないわけではありません。
むしろ逆で、完成度が非常に高かったからこそ、“感情が入り込む余白”を感じにくかったのかもしれません。
精密に制御されたEVらしい走り
アクセルを踏み込むと、モーターは低速域から力強いトルクを滑らかに発生させます。
加速レスポンスも非常に自然で、一般的な内燃機関車よりダイレクト感の強い走りでした。
エンジン音や振動もほとんどなく、車内は独特の静粛感に包まれています。
その完成度の高さは、本当に見事でした。
ただ、長年エンジン車を乗り継いできた私には、その正確さが少し機械的に感じられたのです。
私が求めていたのは“少し不完全な感覚”だった
誤解のないように言えば、Jeep Avenger は非常によくできたEVです。
- 静か
- 滑らか
- 扱いやすい
- 都市部で使いやすい
現代のクルマとして考えれば、かなり完成度は高いと思います。
しかし私自身は、クルマに対して少し違うものを求めていました。
エンジン車ならではの“間”
内燃機関のクルマには、独特の“呼吸感”があります。
アクセルを踏み込み、
- エンジン回転が上がり
- 吸気し
- 燃焼し
- 駆動がタイヤへ伝わる
その一連の流れには、わずかなタイムラグや機械的な感触があります。
でも私は、その“少し不完全な感覚”こそが好きだったのだと思います。
クルマと人間が呼吸を合わせながら走るような感覚。
この試乗を通じて、自分が好きだったのは、そういうアナログな部分だったのだと改めて気づかされました。
試乗後、妻が突然言った一言
試乗を終えた帰り道。
私はどこか引っかかるものを感じていました。
「素晴らしいクルマなのに、なぜこんなに心が動かないんだろう」
そんなことを考えていた翌日のことです。
すると、助手席で同じ時間を共有していた妻が、突然こう言いました。
「マニュアルのアバルトに乗ってみたい」
正直、驚きました。
長年一緒に輸入車を乗り継いできたとはいえ、妻の口から“MTのアバルト”という言葉が出るとは思っていなかったからです。
でも、その瞬間に妙に納得しました。
彼女もまた、
- 静かすぎること
- 正確すぎること
- 完成度が高すぎること
に、少し物足りなさを感じていたのかもしれません。
完璧なEVではなく、“操る感覚”を求めて
Jeep Avenger は、本当に完成度の高いEVでした。
だからこそ、
- 静粛性を重視する人
- 街乗り中心の人
- 最新EVに興味がある人
- コンパクトSUVを探している人
には、かなり魅力的な選択肢だと思います。
ただ私たち夫婦は、その完成度よりも、
- 少しクセがあり
- 少し不完全で
- 自分で操っている実感がある
そんなクルマに惹かれていました。
そして、この試乗の翌日。
私たちは人生で初めて、本格的にイタリア車のディーラーへ向かうことになります。
そこで待っていたのは、“静かな精密機械”とはまったく違う、強烈に感情を揺さぶる一台との出会いでした。


