【35年で7台の輸入車を乗り継いだ私が本気で悩んだ】FIAT 600e試乗記。VW T-Rocの“正解”から、イタリア車の“ときめき”へ乗り換えるべきか?

VW T-Rocから乗り換えを検討する筆者によるフィアット600e試乗レビュー記事のアイキャッチ画像 【誤解を正す】輸入車オーナーの本音レポート
ドイツ車(T-Roc)の精緻さに慣れた筆者が、イタリアンEV「フィアット600e」のリアルな魅力を本音で斬る!

「EVはまだ不便そう」
「輸入車の電気自動車って維持が大変なのでは?」

フィアット 600eについて調べると、ネットにはそんな不安の声が数多く並んでいます。

確かに、合理性や効率だけを重視するなら、現代のドイツ車ディーゼルSUVは極めて完成度の高い存在です。実際、現在の愛車であるVW T-Roc TDIには、長距離移動・燃費・高速安定性という意味でほとんど不満がありません。

一度の給油で長距離を走り切れる安心感。
疲れにくいシート。
高速道路での圧倒的な安定感。

まさに「実用車としての正解」です。

しかし、35年以上にわたって輸入車を乗り継いできた私は、最近ふと思うようになりました。

「車に求めるものは、本当に“正解”だけでいいのだろうか?」と。

ハコスカ、ローバーミニ、ディフェンダー110、ディスカバリー3、パサートヴァリアント。

便利さだけでは語れない、“機械と付き合う感覚”に魅了されながら、私は7台の輸入車と濃密な時間を過ごしてきました。

そんな私が今、次の愛車候補として真剣に気になっているのが、フィアットの最新EV「600e」です。

今回は、VW T-Rocオーナーという立場から、実際にフィアット 600eへ試乗して感じた「リアルな本音」を、人間臭く正直に書いてみたいと思います。

ショールームで感じた「ドイツ車にはない空気感」

フィアットのショールームで600eと対面した瞬間、まず感じたのは“空気の柔らかさ”でした。

現在の愛車T-Rocには、ドイツ車らしい無駄のない機能美があります。
どこまでも合理的で、精密で、真面目。

一方で600eは、そこに停まっているだけで周囲の空気を少し明るくしてしまう不思議な存在感がありました。

丸みを帯びたボディライン。
愛嬌のあるヘッドライト。
そして、どこか温かみを感じるインテリア。

スペック表には絶対に載らない魅力ですが、この「感情に訴えかける力」は、昔からイタリア車が本当に上手い。

私は35年前、ハコスカからローバーミニへ乗り換えた時にも、似た感覚を味わいました。

理屈では説明できないのに、「この車と暮らしたい」と思わせる何かがある。

600eには、そんな“危険な魅力”が確かにありました。

T-Rocとは違う。EVならではの身体感覚

実際に運転席へ座ると、T-Rocとの違いはすぐに分かります。

VW T-Roc TDIとフィアット 600eのサイズ・居住性比較インフォグラフィック

数値上のサイズ差はそれほど大きくありません。
しかし、EV向けに最適化された床下バッテリー構造の影響もあり、着座感覚には独特の違いがありました。

T-Rocが「車体に深く包まれている感覚」だとすれば、600eはやや視点が高く、少し腰高な印象です。

これは好みが分かれる部分かもしれません。

また、後席スペースも決して広大ではありません。

私の感覚では、家族4人で荷物を満載し、長距離旅行を頻繁にこなす“万能SUV”というよりは、夫婦や少人数での日常移動を楽しむ車という印象でした。

ただ、そのコンパクト感が逆に街中では大きな武器になります。

600eの全幅は約1,780mm。

最近の輸入SUVとしては扱いやすいサイズで、日本の狭い道路や立体駐車場でも神経を使いすぎずに済む絶妙な大きさでした。

「大きすぎない輸入車」

これが今、意外と貴重なのかもしれません。

EVなのに、どこか“人間臭さ”が残っている

走り出してまず感じたのは、EVらしい滑らかな加速です。

EV(電気自動車)の充電プラグと充電スタンド
無給油で長距離を走れるディーゼル車と比べると、EV運用では計画的な充電の手間が必須になります。

アクセルを踏んだ瞬間、モーター特有の太いトルクでスッと前へ出る感覚は非常に気持ちがいい。

街中では、本当に扱いやすい車だと感じました。

しかし面白かったのは、600eが単なる“静かなEV”ではなかったことです。

ドイツ車のEVのような「寸分の狂いもない精密感」とは少し違う。

段差を越えた時のサスペンションの動きや、ブレーキホールド解除時のわずかな感覚などに、どこか“機械らしい味”が残っているのです。

もちろん、人によってはこれを「粗さ」と感じるかもしれません。

でも、私には逆にそれが魅力的に感じられました。

ローバーミニの重いステアリング。
ディフェンダー110の隙間風。
ディスカバリー3の電子制御。

どれも合理性だけで見れば欠点です。

しかし、後になって思い出に残るのは、いつもそういう“クセのある車”でした。

600eにも、少しだけ同じ匂いを感じたのです。

航続距離は「不便」なのか?

現在の愛車T-Roc TDIは、一度の給油で800〜1000km近く走れることもあります。

しかも軽油なので燃料代も比較的安い。

長距離移動という意味では、本当に優秀です。

それに対して600eは、使い方や季節によって大きく変わるものの、高速主体やエアコン使用時では300〜400km前後になるケースもあります。

当然ながら、長距離では充電計画が必要になります。

ここを「面倒」と感じるかどうかが、EVを受け入れられるかの分岐点でしょう。

ただ、私は試乗後にこう思いました。

「それも含めて、新しい車との付き合い方なのかもしれない」と。

昔の輸入車は、今よりずっと手がかかりました。

音や振動を感じながら機械の調子を読み取り、時にはこちらが車に合わせる。

効率だけで見れば不便でしたが、その分だけ車との距離は近かった。

EVも、ある意味では似ています。

充電計画を立て、残量を気にしながら走る。

そこには確かに手間があります。

でも、その手間を“対話”として楽しめる人なら、EV生活は意外と豊かなものになるのかもしれません。

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VW T-Rocか、FIAT 600eか。35年輸入車に乗ってきた私の本音

結論から言えば、総合性能だけなら今でもT-Rocの方が合理的です。

長距離移動。
燃費。
高速安定性。
荷室容量。

どれを取っても、ドイツ車らしく極めて優秀です。

「失敗したくない人」にとっては、T-Rocは非常に完成度の高い選択肢でしょう。

しかし、600eには合理性では説明できない魅力がありました。

ガレージに停まっているだけで少し気分が上がる。

朝、乗り込むたびに少し笑顔になる。

効率ではなく、“感情”に作用する車。

35年も輸入車を乗り継いでいると、最後に残るのはスペック表ではなく、「その車と過ごした時間の記憶」なのだと実感します。

600eは、まさにそういうタイプの車でした。

まとめ|FIAT 600eは「正解」ではなく「ときめき」で選ぶ車

フィアット 600eは、万人向けの万能EVではありません。

長距離移動だけを重視するなら、ディーゼルSUVや国産EVの方が合理的でしょう。

しかし、「移動を効率化するための道具」ではなく、毎日の生活を少し豊かにしてくれる存在を求めるなら、この車は非常に魅力的です。

ドイツ車のような精密な合理性ではなく、イタリア車らしい“感性”で惹きつけてくる。

その独特な魅力は、実際に見て、触れて、走らせてみないと分かりません。

もし今、あなたがT-Rocのような優等生SUVと、フィアット 600eのような個性派EVの間で迷っているなら、一度だけ自分に問いかけてみてください。

「私は、正解を探しているのか?」

それとも——

「ときめきを探しているのか?」

フィアット 600eは、きっと後者のために作られた車です。


【免責事項】

本記事は、35年以上にわたり輸入車を乗り継いできた筆者個人の試乗体験および主観的な感想に基づいています。居住性、乗り味、航続距離などの印象は、走行環境や使用条件、個人の感覚によって大きく異なります。

また、車両仕様・装備・価格は今後変更される場合があります。購入検討時は、必ず正規ディーラーで実車確認および試乗を行った上で、ご自身の用途に合うかをご判断ください。