はじめに:現代のSUVとは違う「生きた機械」との8年間
私の35年にわたる輸入車ライフの中で、初めての愛車であるローバーミニに続き、どっぷりとイギリス車の沼に浸かることになったのが、この巨大で無骨な「旧型ディフェンダー110(クラシック・ディフェンダー)」でした。
現在の洗練されたSUVとは全く異なる、ラダーフレーム構造の四角いアルミボディ。 8年間という長い時間を共に過ごし、日常の足として、そして休日の相棒として乗り倒した私にとって、このクルマは単なる移動手段ではなく「生きた機械」そのものでした。
今回は、今でも世界中に熱狂的なファンを持つ旧型ディフェンダーの「リアルな維持の苦労」と、なぜ手がかかるのにあれほど愛おしかったのか、元オーナーの視点で当時の記憶を振り返ります。
キーを回せば「今日の体調」を教えてくれる

旧型ディフェンダーの最大の魅力は、クルマとの圧倒的な「対話感」にありました。
現代のクルマはボタン一つで静かにエンジンが目覚め、常に100%の状態で走ってくれます。しかし、旧型ディフェンダーは違います。 朝、重たいドアを開けて運転席によじ登り、キーを回してエンジンを目覚めさせる。その瞬間の「音」と「振動」で、クルマが今日の自分の体調を教えてくれるのです。
「今日はちょっとご機嫌斜めだな」「今日は絶好調だな」。 相棒はいつも、エンジンの音とステアリングから伝わる鼓動で、私に全てを伝えてくれました。ドライバーがクルマの調子を感じ取り、それに合わせて操作してやる。そんなアナログで泥臭い関係性が、たまらなく魅力的でした。
忙しさにかまけて招いた「エンスト連発」のドタバタ劇
とはいえ、古いイギリス車です。手放しで優等生だったわけではありません。8年間の所有期間中には、リアルな「維持の苦労」もありました。
今でもよく覚えているのが、エンジンの不調トラブルです。 ある時期、毎日乗っている中で「なんだかエンジンの吹けが悪いな」という予兆をはっきりと感じ取っていました。相棒からのサインです。しかし、当時の私は仕事が忙しく、「まあ、今週末にでもディーラーに行けばいいか」と後回しにしてしまっていました。
するとどうでしょう。ご機嫌を損ねた相棒は、交差点や渋滞の中で「よくあるエンスト」を何度も引き起こすようになってしまったのです! 巨大な車体のマニュアル車でエンストを連発するのは、冷や汗ものでした。結局、慌ててディーラーへ駆け込み、平謝りしながら修理をお願いすることに。
「調子が悪い時はすぐ診てやらないと拗ねる」。そんな人間くささも、今となっては笑える良い思い出です。
時代は進化しても、当時の「最高の相棒」だった

オンロードでの重々しい走りも、オフロードに入った瞬間に見せる圧倒的な走破性も、当時の私にとっては間違いなく「最高」でした。
先日、最新技術を纏って別次元の進化を遂げた「新型ディフェンダー110」に試乗する機会がありました。エアサスがもたらすレンジローバー級のフラットライドや、緻密な電子制御の凄さに驚愕したのも事実です。時代とともに、クルマは確実に進化しています。(※新型ディフェンダーの試乗記はこちら)
しかし、だからといって旧型ディフェンダーの色褪せることのない魅力が減るわけではありません。
不便で、重くて、手がかかって、機嫌を損ねることもある。 それでも、あの四角いボディを揺らしながら走った8年間、クラシックディフェンダーは間違いなく、私の人生において「最高の相棒」でした。
この無骨な相棒との濃密な8年間があったからこそ、私はその後、同じランドローバーの「ディスカバリー3」へと乗り換え、ハイテク電子制御とエアサスペンションの洗礼(と感動)を味わうことになるのです。


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